昭和四十四年十一月十一日
          夜の御理解 

 今日、東京から送って来とりました、歌舞伎の雑誌を読ませて頂いておりました。
名優たちのいろんな言葉の中に、五代目団十郎と云う人が言っておる言葉が、私の心に
「成る程だ」とこう合点が行くものを感じましたから、私ひかえておりました。
やはり新しい試みというか、新しい事をやって次々とひいきというか、観客の心を引くような、新しい事をする..まあ役者がありまして、それに対して団十郎が言っておりますこと、「何かせねば客がこないような役者ではだめだ」と、いう事を言ってますね。
何か、新しい事をしなければ客が集まってこないようことでは、そういう役者じゃだめだと、私もそれを共感いたしました、で今度の豊美の結婚の事に付きましても、色んな...色々な話が有りましたから、あ..例えば頂きものしたからこうしなければならんとか、
もう私はもう、一切あの頂き物ということに対してはもう、私ここに頂いた物に対する自身があるとです。何一つお返しをしなくても、何をしなくてもそれだけでいいと言うてくれる者があるんですけども、とやこうなってまあ、ああ云う結果になったんですけどもね。
こりゃあ豊美だけの事じゃありません、けども本当にあの、何かその新しい目先の変った事をしなければ信者が集まって来ないなんていうな私、教会ではだめだとこう思うですね。私よく聞く話ですけども、青年会を若い者を集める為にダンスパーティ開いたり、でから
レコードコンサートを開いたりして、その若い人達を集めて、そしてまあ徐々に信心の話をすると、成る程、そういうような事をすると確かに集まってくるけれども、良い信心話になると皆なすぐ散ってしまって、え..集まらなくなって来るというような例が沢山有りますね。この頃にある教会の話が有ってましたが少年少女会、丸少育成でその毎日日曜日に鉛筆やるとか、雑記帳やったりして、そのもうそれこそ信心のない子供がわんさと集まってくるそうです。
 止めるとスパッとなくなってしまうというんですよね。いくら、発会しても、発会しても本当の精進( ? )出きないいうような話しを聞きましてが、本当にそれではやっぱりだめだとこう思いますですね、つまらない話しです、私もやっぱりそれ、そうだとこう思う。ところがついにですね、四代目ではなくて、六代目の団十郎と言う人が名優だったらしいですね。
この人もそういう実力を持ちながら、もう絶えず研究したというんですね、絶えず新しい事をやって、観客をそのまあ集めたと言う話が次ぎに出ておりましたが..ね.そこも又大事だとこ思う。
合楽の場合なんかは、どちらかというと後ろの方じゃないかとこう思うんですね。
私は例えば、新規の事しなければ、信者が集まらん、と言ったようなことではない、
いわば、あらゆる自身を持っておりますけれども、それから先が皆さん達の色んな働きで、色んな、たとえば青年会の大会を開いたり、様々のもようし事をしたりなさる、 それをいけないとは言わない、ですから根本にそいう新規の事をしなければ人が集まらないといったようなことではなくて..ね、確信を持った、いうならば5代目南団十郎がいっておる言葉のように「何かせねば客がこないような役者ではだめだ」と..ね、そういうその一つの大きな信念を持っておって、新しいことから、新しい事へとそれと同時に、又目先の変わった.あ..生き方といったような物をそれに加えていけばこれはもう鬼に金棒だとこう思うですね。
そこで、だから名人気質ばかりを発揮してこうだというのでもどうかと思う。
商売さして頂いても同じ事..ね、自分とこは売り出しなんか、特別の売り出しやらなくても、確固たるお客さんが有るんだから、という自信を持っておる事と同時に、その上に又大売出しなら大売出しといったような事、何々大売出しといったような、名目を付けて売り出しをする。
一回でもやはり、でっかい売りだしをした方がいいと言われておりますが、そういう自信実力を持っておって又直かつ新しいお客の目を引くような、生き方を研究していくという事もまた大事、その辺がかみ合いが大事、実力もない、自信もないのに( ?)ばかりしておるいうのでなくて、自信もない、そしてたとえば、信者を集めたいばっかりにです、様々なもようしをしておるといったような教会で、そういうことで集まって来ておるといったような、信心、信者では役に立たないと私は思うですね。
 何をしなくても、なあにはなくても..御取次ぎの働きというものは厳然としてあっておるというなら、もうそれこそ、それだけで人が助かるということだけで人が集まる、ということだけに自信をもって、そして次の段階に行けれるような、御陰を頂きたいなと今日、私そういう名優たちのことを聞いてから、信心にもやはり一脈通じるものがあるなあ
といったような事を感じたんですけどね。  どうぞ
        
                渕上順子